「仕事が嫌で仕方がない人が読む記事」

 

この記事は、仕事が嫌で仕方ないという問題を抱えた人が、マインドを上手に使い、どのように解決すればいいかについて書かれています

仕事が嫌で仕方がないという人がいます。私はそういった話を聞くと「別に仕事が嫌でもいいんじゃないですか」と言ってみることがあります。もし、そんな私に対して「それもそうですね」という反応をするとしたら、その人はそもそも大して仕事が嫌ではなかったということでしょうから問題ないでしょう。「いや、それでもどうしても嫌なんです」という人がいたとすれば、それはそれで問題ありません。その人は仕事が嫌であるという自分の意思がしっかりとしているわけですから、望みがあると言えます。望みがあるとは一体どういうことか、この問題について深く考えていきましょう。

仕事が嫌であることの問題点は、生産性が落ちてしまうことです。人間は嫌な仕事を行う際には、生産性が高まらないようにできています。なるべくそのことをやらなくて済むように、創造的な方法を発見します。このマインドの働きをクリエイティブアヴォイダンス(creative avoidance)と言います。人間は嫌な仕事をする場合において、クリエイティブに生産性が高まらないようなやり方をやってしまうということです。


仕事が嫌である場合、当人の心身に悪影響であることも問題点としてあげられます。
先程述べたクリエイティブアヴォイダンスの最たる例が、体調不良です。体調不良であれば、嫌な仕事をやらなくてもすむ言い訳がたちます。もちろん、昨今では多少体調が悪いくらいで大手を振って休めるという状況ばかりではないでしょう。しかし、そうは言っても、体調も良く元気いっぱいのときよりは嫌な仕事をやらなくてもいいという言い訳が立ちます。人間は、嫌な仕事から逃げ出すためには自分の体の具合を悪くすることすら起こしてしまいます。

ところで、コーチングでは、モチベーション(動機づけ)を2つに分類して考えます。1つ目は、制限的モチベーション(restirictive motivation)です。制限的モチベーションとは、「~してはいけない」「~しなければならない、さもないと~になる」といった考えをもとにした動機です。つまり、禁止や恐怖によって、本来は望まない方向へと突き動かされている状態です。当然のことながら、こういった動機のもとで仕事をしようと思っても生産性は上がりません。上記のように、人間はそもそも嫌なことをできないようにできているからです。また、リラックスできないからという理由もあります。リラックスできないということは、抽象的な思考を正しく行うことができず、結果として生産性を高めることが難しくなります。

2つ目は、建設的モチベーション(constructive motivation)です。建設的モチベーションとは「~したい」「~を選ぶ」「~が好きだ」という考えをもとした動機です。建設的モチベーションに基づいて行動がなされた状態や、あるいはその行動そのもののことをコーチングでは want to と呼びます。want to の状態のとき、人は創造的になり、パフォーマンスを向上させ、高い生産性を実現します。ものごとの高い生産性を実現できるかどうかは、いかに建設的モチベーションにもとづいて物事を行うかにかかっているのです。


仕事が嫌で仕方がないという人は、制限的モチベーションにもとづいて仕事をおこなっている可能性が極めて高いと言えます。
つまり、本人の能動的な自己決定の結果行っていないからであるということです。簡単に言えば、本音ではやりたくないのにもかかわらず、やらないと怒られるとか、やらないと食いっぱぐれるとかいった気持ちで行っているからです。ということは、仕事そのものの側に問題があるのではなく、仕事をどのようなモチベーションにもとづいて行っているかというあなたのマインドの使い方に問題があるとわかりました。


仕事が嫌だという気持ちを大切にし、自分の責任で続けるなりやめるなりを決めましょう。
つまり、制限的モチベーションにもとづいて行っていた仕事を、自分の中で建設的モチベーションに基づくものに書き換えるのです。「やりたい」「選ぶ」「好きだ」という気持ちに基づいてのみ仕事を行うのです。これがうまくいけば、まったく同じ仕事をやっていても、嫌な気持ちがなくなります。もし、今の仕事の中でどうしてもそれを見出だしことができなければ、辞めて次を探すだけです。辞めてやりたい仕事をやれば、それはそれで問題解決です。冒頭で仕事が嫌だという自分の意思がある人は希望があると書きました。嫌な気持を尊重した上で、上手にマインドを使い、建設的モチベーションで仕事と向かい合えるような環境を作り出しましょう。そうすればあなたは、高い生産性を発揮し、社会にとって益々かけがえのない存在になっていくことでしょう。

 

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何に対しても焦りやすい、パニックになりがちな人が持つべきプリンシプル


苫米地式認定コーチ、TICEコーチの高嶋芳幸です。

「何をするのにも焦ってしまい、パニックになってしまいます」

このような悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。

こういう人を観察してみると、多くの場合は一生懸命に物事に取り組んでいて、決して手を抜こうとしているわけではないようです。

にもかかわらず、差し迫った期限があったり、責任の重い仕事であったりというチュエーションで、つい焦り、パニックになってしまいます。

そしてそういう場合は往々にして、致命的な失敗をしてしまうものです。

そこでこの記事では、大事な局面ほど焦ってしまい、パニックになってしまう人が普段からどのようなことに心がけておくべきかについて考えます。

なぜあなたは焦ってしまうのか

さっそくですが、何に対しても焦りやすく、パニックになる人はなぜそうなるのかについて答えを書きましょう。

答えは、「準備不足」です。

そんな単純なこと、、、と思われたでしょうか。

しかし、実際に準備不足なのです。

このように言うと、実際の人を例に挙げて反論をする人がいます。

あの人はどんなに急な状況で物事を振られても、即座に一定水準以上の成果を出すことができています、と。

確かにそういった人はいるでしょう。

しかし、そのような人も、その人の中ですでに準備されたものを上手に組み合わせ、まるで即興で一から十まで生み出しているかのように見えるだけなのです。

どんな人であれ、準備がなければ上手に対応する見通しが立ちません。

そうなれば、焦ってしまったり、パニックになってしまうことも無理もないでしょう。

よって、焦りやすくパニックになりやすい人は、普段から準備をするということを心がければよいのです。

その準備に関して、具体的に考察を与えましょう。

ここで言う準備には、二つの種類があります。

マインドのレベル、タスクのレベルです。

マインドのレベルでの準備

まずは、マインドのレベルでの準備について説明しましょう。

コーチングにはマインド(mind)という概念があります。

これは一般に、脳と心(の働き)と理解されます。

本来であればこういった説明にももっと長く丁寧な記述が必要なのですが、ここでは一般に「心と呼ばれているもの」であると理解しておけばよいでしょう。

さらに、コーチングでは、マインド内部の具体的な働きに対しても複数の概念が用意されています。

その代表的なものが、コンフォートゾーン(comfort zone)です。

コンフォートゾーンとは、もともとは心理学の用語であり、コーチングの創始者であるルー・タイスがコーチングの説明原理に採用することで、一般層にも広く浸透した概念です。

コーチングとは、マインドを上手に使いながらゴールに向かって進むための知識・技術のことです。

そのためにはこのコンフォートゾーンという概念が有用だったということです。

さて、コンフォートゾーンの定義は「慣れ親しんだ、安心できる領域」のことです。

この場合の領域とは、物理的なものから情報的なものまで含まれます。

通い慣れた喫茶店や、与えられて数年が経つ役職などがコンフォートゾーンの好例であると言うことができます。

どこでもコンフォートゾーンになるよう準備する

一般に、人はコンフォートゾーン内部ではリラックスし、高いパフォーマンスを発揮することができるとされます。

逆に、コンフォートゾーンを一歩外に出てしまうと、緊張状態になり、冷静に物事を進めていくことができなくなってしまいます。

焦ってしまい、パニックになってしまう人は、四六時中そのような状態であるわけではないでしょう。

このコンフォートゾーンから出てしまっているからこそ、焦り、パニックになってしまっているのです。

たとえば、人前に立って話す場面になるといつも焦ってパニックになるという人がいたとします。

その場合は、「人前に立って話す」という状況そのものがコンフォートゾーンの外側になっているのです。

対策は簡単で、自分にとってことさら焦り、パニックになってしまう場面をコンフォートゾーンにしていまえばいいということになります。

とはいうものの、実際にその場面をたくさん経験して慣れることは大変です。

ここで準備という発想が出てきます。

何度もマインドの中で、その場面を繰り返し、マインドの中でコンフォートゾーンにしてしまえばいいのです。

実は人間の脳は、実際に起こったことと、脳の中で仮想的に起こったことの本質的な区別はつきません。

この性質を利用して、あらかじめ焦りやパニックが予想される場面を、ポジティブな情動とともに脳内で繰り返しリハーサルし、コンフォートゾーンにいれてしまうという手段をとります。

そのための具体的なテクニックとして、アファメーション(affiermation)や、ビジュアライゼーション(visualization)があります。

いずれにせよ、つい焦りったりパニックになりがちな場面を、あらかじめコンフォートゾーンにいれておくというやり方で、安全かつ効果的に準備をすることができるのです。



ゲシュタルトとは

さて、次にタスクのレベルでの準備の説明に入っていきましょう。

まずは、コーチングの用語であるゲシュタルト(gestalt)という概念を理解していただきたいと思います。

ゲシュタルトとは、部分と全体が双方向的に関わりあうことで出来上がるあるひとまとまりのことを意味します。

少しわかりにくいと思いますので、具体的に考えてみましょう。

パソコンを思い浮かべてください。

当然のことながら、パソコンには部品があります。

ディスプレー、スピーカー、キーボード、CPU、HDなどです。

これらが総合に組み合わさり、全体としてひとつのパソコンとなります。

そして同時に、パソコンという全体像があるからこそ、各パーツの機能が決まるとも言えます。

このときパソコンは、部分と全体の関わりあいによって生じるひとまとまりとみることができます。

こういったありようのことをゲシュタルトというのです。

さて、この例はパソコンという形のあるものでしたが、なんらかの行為もひとつのゲシュタルトと考えることができます

「朝の身支度」を例にあげてみましょう。

朝起きてやることを並べてみます。

顔を洗う、トイレに行く、朝食をとる、歯を磨く、髪の毛をセットする、(必要な人は)メイクをする、着替える、、、といった感じでしょうか。

そして、これらが集まって「朝の身支度」というゲシュタルトを形成しています。

焦ったりパニックになることを回避するためには、タスクの集積としてのゲシュタルトを最適な形に準備をしておくという発想が必要になります。

高い視点からゲシュタルトを観察する

ゲシュタルトを認識するためには、抽象度(levels of abstraction)を上げておく必要があります。

抽象度とは、コーチングを学ぶ人にとってはおなじみの概念のはずですが、ここでは「視点の高さ」と理解をしておきましょう。

たとえば、あなたが「朝の身支度」をしていたとします。

その中には本来、様々なタスクがあります。

通常タスクに取り組む際、いま取り組んでいるタスクは「朝の身支度」というゲシュタルトの一部であるという発想はないはずです。

それぞれのタスクをやることにただ何も考えずに流れでやっているだけでしょう。

そして、少しでも想定外の出来事が生じたら、焦ったりパニックになってりしていしまします。

それを回避するために、抽象度という概念が必要になります。

タスクのひとつ上の視点に上がり、「朝の身支度」の視点からゲシュタルト全体を俯瞰して観察します。

すると、タスクがどんな順番になっているか、どこまでが「朝の身支度」に入るかなどと考えることができます。

これは、ただなんとなくタスクを重ねた結果として「朝の身支度」が完了するとというアプローチにはない準備です。

ゲシュタルト最適化し続け、上手に組み合わせて準備する

「朝の身支度」というゲシュタルトを意識できたら、その中にあるタスクを最適化していきます

・この順番が一番いいのだろうか

・同時にやることはできないだろうか

・このタスクはいらないのではないだろうか

など、「朝の身支度」がもっとも最適な形のゲシュタルトになるように調整するということです。

歯磨きと新聞を読むことを同時にやってみたり、髪の毛をセットするのと顔を洗うのを入れ替えてやってみたりと、試してみましょう。

やがて、これが今の段階では最適だという形が出来上がったら、それを無意識に落としていきます

こう書くと難しく思えますが、要するに何度も練習して考えなくても狙ったようにできるようになることです。

このように、ひとつのゲシュタルトを最適な形にして無意識化する作業を、思いつく限りすべてにおいてやってきます

そしてゲシュタルト同士を、上手に組み合わせていきます。

さらに、日常過ごす中で、たまに振り返ってみて前に作ったゲシュタルトをアップデートすることも忘れないでください。

このようにタスクを最適な形で実行することを準備しておけば、あとは基本的にそれをこなすだけです。

しかしそれは、今までのようななんとなく出来上がった流れで行うこととは違います。

最適のゲシュタルトを維持するために、日々観察し、無意識に落とすという高い視点から全体をコントロールするという視点が入っています。

そのような視点を維持すれば、少しくらい想定外のことが起きたとしても、瑣末のことに気をとられず、焦りやパニックが最小限で防ぐことができるはずです

それどころか、あらゆる知的活動のパフォーマンスはどんどんと上がって行くでしょう

いずれもマインドの中の話である

さて、準備をするという観点で二つの視点を紹介しましたが、結局はコンフォートゾーンもタスクもマインドの中での話です

要するに、マインドの中をいろいろな観点から設計し、準備をしておくという発想を持ちましょうということです。

ルー・タイスは、アファメーション、ヴィジュアライゼーションのテクニックを用いて、普段からマインドの準備をしておくことを次のように表現しました。

 

「準備して、準備して、準備してーーーー流れるように動く(prepare,prepare,prepare—-flow)」

私たちはマインドを作り込む方法を手に入れています。

ぜひ、どんな局面でも焦ったり、パニックなったりしないようなマインドの準備をしてみてください。

まとめ

何をするにしてもつい焦ってしまい、パニックになってしまう人は、準備をしておくということでした。

いついかなる状態もコンフォートゾーンになるような準備と、具体的なタスクから構成されるゲシュタルトをたくさん用意し、それを最適化し続けるという準備をしておくことでした。

それらはいずれも、マインドの中での準備ということでした。

参考にしていただけると幸いです。

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「思考は現実化する」はずなのに、なかなかそうならないあなたへ


苫米地式認定コーチ、TICEコーチの高嶋芳幸です。



思考は現実化する  

 

アメリカの著述家、ナポレオン・ヒルの有名な言葉であり、代表作の表題でもあります。

ビジネスパーソンの中でも、自己改革に真面目に取り組もうとしてきた方であれば、よくご存知の言葉でしょう。

実際にこの本を読み、プログラムを受講し、実践をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

もちろんその中には大きな自己変革を遂げ、成功とよべるような達成をされた方もいらっしゃるでしょう。

しかし、   「そうは言ってもなかなか現実は変わらないよな」   そんな感想をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

どこに問題点があったのでしょうか。

この記事では、ナポレオン・ヒルの提示した成功哲学の概要と問題点を指摘した上で、認知科学のパラダイムに基づくコーチングでは、どのように「思考を現実化」していくのかについて述べたいと思います。

 

ナポレオン・ヒル

ナポレオン・ヒルは、新聞記者として鉄鋼王として知られるアンドリュー・カーネギーにインタビューをしたことがきっかけで、成功哲学の体系化に取り組み始めました。

1908年のことです。

そこからナポレオン・ヒルは、多くの成功者を研究し、彼らはどのような頭脳の使い方をしているのかについて研究しました。

研究対象となった成功者の数は、なんと500名を超え、そこにはアンドリュー・カーネギーの多大な尽力があったとされています。

そして、20年間もの歳月をかけて完成させたのが、かの有名な『思考は現実化する(Think and Grow Rich)』という書籍です。  

 

思考が現実化する仕組み

思考が現実化して成功していくためのメカニズムは、その中でどのように説明されているのでしょうか。

この書籍の中では「成功」を次にように定義します。  

成功とは、他人の権利を尊重し、社会正義に反することなく、自ら価値ありと認めた目標(願望)を、黄金律に従って一つひとつ実現していく過程である。  

文章を見てみると、「他人の意見を尊重する」、「社会正義に反しない」という言い回しがありますが、これは「公共(自分以外)の利益に反しない限り」という意味合いでしょう。

せっかくならば「公共の利益のためにもになる」という条件にすればいいとは思いますが、基本的にこの定義は問題なさそうです。  

この成功を達成するために、まず推奨されるのが以下の二点を定めることです。   ・明確な目標設定 ・完全な計画   そして、これらを定めたのち、さまざまな諸要素を満たしていくという流れです。

そのいくつかを紹介すると、

  • 信念(何に重きを置くかの価値観)の強化
  • 知識の習得
  • 無意識の活用
  • 願望実現にふさわしい精神性の身につけ方
  • モチベーションのコントロールと利用
  • 情動のコントロールと利用
  • マスターマインド(仲間との関係)の構築などです。

などがあります。

黄金律(成功のために守るべきこと)に基づいた生活を送ってこれらを実践していくことで、設定された目標(願望)が達成される、つまり「思考は現実化」していくというわけです。

 

現状の奴隷を作り上げる!?

さて、このプログラムの問題点はどこにあるのでしょうか。

それは、最初の一歩である「明確な目標設定」と「完全な計画」そのものにあると言えます。  

まず「明確な目標設定」ですが、実際に書籍の中では、   あなたが実現したいと思う目標(願望)を「はっきり」させること   と望むものを具体的にするよう推奨しています。

これは非常に危険な考え方です。

なぜならば、現時点で自分が想像出来るはっきりとした目標(願望)が、本当に自分にとって望ましいものであるかどうかわからないからです。

確かに、今の時点ではっきりと想像できるような目標(願望)はあるのかもしれません。

しかしそれは、あくまで過去の記憶に基づき、その中でより自分にとって望ましいものを選び出したものに過ぎません。

その時点では、それが自分にとって望ましい目標(願望)であるかどうかはわからないでしょう。

むしろ、過去の自分の記憶に縛られた、偽物の目標(願望)である可能性が高いといえます。

望むと望まざるとに限らず、私たちはたくさんの外部からの情報を取り入れながら、今の認識を作っています。

その中には、未来の自分にとって望ましくない価値基準がたくさんあるはずです。

その価値基準に基づき、現時点ではっきりとした目標(願望)を定めるということは、ますます自分にとって望ましくない状態を強化してしまう恐れがあります。

ということで、現時点ではっきりとした目標(願望)を具体的にイメージすることを強く推奨することは、リスキーなことであると考えられるのです。  

また、仮にそういったはっきりとした目標(願望)を決めることを認めたとしても、その次の「完全な計画」もいただけません。

たしかに、何かしらの目標(願望)を決め、そこから演繹的に導き出される形で計画を練ることは大切でしょう。

なので、まったくの無計画に物事を進めることが正しいとは思えません。

しかし、そこにもし「完全な計画」を求めるのであれば、これはこれでまた正しいとは言えないのです。

数学者であり、論理学者でもあるクルト=ゲーデルは、あるシステムの中には必ずそのシステム内で真偽を決定不可能な命題が紛れ込むことを証明しました。

かの有名な不完全性定理です。

この定理は、自然数論の内部において証明されたわけですが、1980年代に入ると、グレゴリー・チャイティンにより、その定理が数学宇宙全般に拡張されることとなりました。

つまり、この世の中に完全なものはないということが学問的に証明されてしまったわけです。

だとすれば、ここでいう完全な計画というのもありえない話です。 では、どのように考えればいいのかというと、その時点において手に入った情報に基づき、その時点での最適な計画を考えることでしょう。

こう考えれば、その裏側には、現時点では計画できない要素があることを認めるということになります。 つまり言い換えれば、状況が進むごとに新しい情報が集まり、臨機応変に計画を変え続けることを認めるということです。

現時点での最適な計画を考えた上で、あとはやりながら適宜修正していく、考えてみればこれは実に当たり前のアプローチでしょう。

もし「完全な計画」ということを前提とするならば、その当たり前のことができなくなってしまいます。

状況がどんどん変わっても、最初に決めたその「完全な計画」に固執してしまい、それを無理やり推し進めるような事態が生まれてしまうでしょう。

このようなことは現実世界においても往々にして見られるのではないでしょうか。  

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コーチングでは現状の外側のゴールを設定する

さて、以上のことを踏まえて、コーチングではどのように考えていくのでしょうか。

まず、コーチングにおける目標(願望)のことはゴールと呼ばれます。 このゴールは、心から達成したいものと理解しておけばいいでしょう。

ただし、ゴールの設定にはいくつもプリンシプルがあり、それを外すことは許されません。

プリンシプルの代表的なものは、   ゴールは現状を大きく超えるようなものでなければならない   というものです。

現状とは、現在が理想的に進んだ未来も含まれます。

コーチングのゴール設定では、そのような現状と構造的な矛盾を引き起こす、つまり、現状を破壊しなければ達成できないものをゴールにしなさいと言うわけです。

たとえばあなたが、小説家であったとします。

そして、芥川賞を受賞することをゴールにしたとします。

残念ながら、これは現状の内側のゴールであり、コーチングおいては間違ったゴール設定と判断します。

いかに芥川賞を受賞することが容易ではないとはいえ、それは小説家であるあなたにとって、現状の中にある理想的な状態だと考えるからです。

つまり、現状を大きく超えるゴールではないということです。 この場合の正しいゴール設定には、二つのアプローチがあります。

ひとつは、小説家とは全く違った業界でのゴールを設定するということです。 もし、大企業の社長になるというゴールを掲げれば、小説家の世界から飛び出さなくてはならないため、現状を破壊せざるを得ない正しいゴールであると言えるでしょう。

もうひとつは、同じ小説家の延長であっても、ゴールの程度をすごく上げてしまうというアプローチです。

「ノーベル文学賞をとり、世界中で累計1億冊の小説を売るくらい、世界中の人に自分の文学世界を楽しんでもらう」というゴールを設定したとします。

このくらいになってくれば、小説家のゴールでありながらも、現状を最適化していけば達成できる範疇を超えていると考えられるでしょう。

いずれにしても、現段階ではっきりと想像できるようなものではないはずです。 大きくて達成できたら嬉しいだろうことはなんとなくわかるが、むしろその中身は現状から離れすぎていていまいち想像しづらい、というのが本音ではないでしょうか。

正しいゴール設定とは、過去の記憶をベースとした現状に絡み取られることを回避するために、このくらい大きなゴールを設定することを推奨するのです。  

 

ゴールはどんどんと更新する

さらに、ゴールは一度設定して終わりというものではありません。  

ゴールはどんどんと更新していく   この点もゴール設定における重要なプリンシプルです。

ゴールを更新すべき理由はいくつかあります。 一つは、行動する中で新しいゴールが見えてくるからです。

現状を超えたゴールを設定し、暫定的な計画を立て、それに向けて行動する、そういったサイクルの中に入ると、それまで触れることがなかった知識が入ってくるようになります。

たどり着きたい先が現状の外側なわけですから、それに向かっていけば、新しい知識が入ってくるというのもうなずける話でしょう。

その知識は、いままでのように、たまたま近くにあったものから得てきた受動的なものではありません。 自分で設定した現状の外側のゴールに基づいた、極めて能動的なものです。

そのような知識が蓄積されてくると、ゴールを設定した段階では見えなかったさまざまなものが新しく認識できるようになります。

その中で、「自分にとってはこちらのゴールの方がいいのではないだろうか」と気がつく事態が現れます。

たとえば、小説家としてノーベル文学賞を受賞するくらいの作家になると決めて行動した人が、その行動の中で、海外の文学事情に精通していったとします。 ノーベル文学賞を受賞するには、世界の文学ニーズがどのようなものかを知る必要があるからです。

そうすると、日本ではあまり知られていない素晴らしい作家が、海外にもたくさんあるということに気がつきました。

こんな素晴らしい作品を日本人が享受できていないことに、もったいなさを感じるようになり、「実は自分はこういった作品を日本人に届けることをやりたいのでは、、、?」と考えるようになります。

そこで、文学作品の流通システムや、翻訳者について調べたりしはじめるようになり、行動がどんどんと広がっていきます。

そしてその人は、「世界中に素晴らしい文学を届けるシステムを構築する」ことが自分の本当のゴールであると気がつきます。

このように、新しい知識の獲得とともに、ゴールが変わるべき状況があるのです。

多くの人にとっては、最初に設定されたゴールは、過去の受動的に得てきた知識に基づいて判断されるわけですから、むしろ更新される可能性が高いといえるくらいです。    

 

さて、ゴールを更新するべきもう一つの理由は、モチベーションの問題です。 モチベーションとは、行動を促すやる気のことですが、これは達成したいゴールの結果として生じるものです。

多くの人はこの因果を逆に捉えてしまっています。

モチベーションがあるからゴールを達成できるというふうに考えてしまうわけです。 しかしこれは順序が逆で、どうしても達成したいゴールがはじめにあり、そこに進みたい抑えきれない衝動のようなものをモチベーションと考えるのが正しい理解です。

より専門的に言えば、ゴールの世界があり、その臨場感が上がった結果ゴール側がコンフォートゾーンになり、コンフォートゾーンに引きずり込まれるその心理的作用をモチベーションと呼ぶということです。

強烈なゴールがあり、それがどうしても達成したい人はものすごいモチベーションを発揮し、どんどんと行動してしまいます。

ところが、そういった人も、ゴールがだんだんと近づいてくると、モチベーションが失われていきます。

ゴールが遠いところにあり、そこに行きたくて仕方がないという気持ちがモチベーションなのだから当然でしょう。

この場合にどうするかというのが、ゴールの更新なのです。

行動し、ゴールが近づいてきた結果、ゴールをさらに遠くへと意図的に放り投げます。 その結果として、継続的に高いモチベーションを維持することができるようになります。

こうすることによって、当初設定したゴールは通過点となり、気が付いたらすでに達成していたという状況を作ることができるのです。

だからこそ一度ゴールを設定したからといっても、それが完璧なものではなく、より高い方へと更新してく必要があるということです。

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現実とは何か

ところで、「思考は現実化する」の「現実」とはいったいなんのことを示すのでしょうか。

「思考が現実化する」とは思考したものがどのようになることを言っているのでしょうか。

「現実」という言葉の意味は、認知科学の達成以前と以後で全く違うものになりました。

そもそも認知科学以前の現実とは、物理的現実世界のことを言いました。 この文章を読んでいるみなさんの目の前には、スマホやPCの画面が存在し、座っているとしたらお尻の下には椅子があるでしょう。

また、視点を移動してみると、天井が見え、室内の蛍光灯が光っているのがわかるでしょう。

このように五感を通じて直接的に触れられ、感じられる世界を単純に物理的現実世界と呼んだのです。

そしてその物理的現実世界は、統一的、絶対的なものとして確かにあるのだと素朴に信じられていたわけです。

ところが、認知科学以降、このような認識の仕方は間違いであったとされるようになりました。

例えば、目の前にあるスマホの画面を例に、このことを考えてみましょう。

あなたがスマホの画面を眺めている横に、スマホの画面の設計者がいたとします。

その人とあなたが見るスマホの画面は、果たして同じようなものとして目に映っているでしょうか。

おそらく設計者は、その画面のサイズや材料、画素数といったことを感じながら見ているはずです。

それは設計者の個人的な経験の基づく記憶が、あなたのそれとはまったく違うからです。

このように現実とは、その人の記憶に基づいて主観的に作られるものであると理解されるようになりました。

同じ記憶を持つ人間がいない以上、誰にとっても同じ統一的、絶対的な物理的現実世界は存在しないというのが現代的な現実の捉え方です。

もしかしたら存在するのかもしれませんが、すべての人が固有の記憶に基づいて、その人なりの偏ったものの味方で世界を見る以上、ないも同然であるとしているのです。

いずれにせよ、それぞれの記憶に基づき、脳内でいままさに認識している世界のことを「現実」と呼び、この現実を理想の状態にすることが「思考が現実化」した状態だと考えることができます。  

 

臨場感が高い可能性が現実として選ばれる

個人の中には、複数の現実の可能性があります。

たとえば、あなたが人前に立って話している場面を思い浮かべてみてください。 どんな気分になるでしょうか。

わくわくして、前向きな気持ちになるでしょうか。

あるいは、緊張して、できればそんな状況は避けたいなと思うでしょうか。

いま二つあげた例は、そのままあなたの現実の可能性を表します。

もしあなたが、ワクワクして前向きな気持ちで人前に立つことを認識したとき、現実はそのような形として現れます。

実際に何を話そうかネタを仕込んだり、人前に立って話すにふさわしい服をコーディネートしたりという行動に出るでしょう。

しかし、緊張して、できればそんな状況避けたいと思っていれば、断る方法を考えはじめるでしょう。

このように同じ人間の中でも、現実の現れ方はさまざまな可能性がありえます。

そしてその中でも、そのときもっとも臨場感の高い可能性が、あなたの現実として選ばれているということです。

ここまでの議論をまとめると、以下のようになります。

思考が現実化するためには、まず正しくゴールが設定される必要があります。

ゴールが設定されるということは、その人の中に現実として選ばれる可能性の選択肢を一つ増やすということです。

ゴールは現状を壊すような大きなものにするというプリンシプルから考えれば、ゴールの世界と現状の世界は同時に存在出来ず、矛盾が引き起こされます。 最終的にはどちらかひとつしか選ばれません。

どちらが選ばれるかは、臨場感の高い方、つまりよりリアルに感じられる方が選ばれるということです。

ということは、設定されたゴールの臨場感をいかにしてあげていくかが「思考を現実化」するために重要であるとわかります。

 

臨場感を上げるためにはアファメーションが有効

ゴールの世界の臨場感ををあげていくための中心的な技術には、アファメーションがあります。

いま目の前で選択され、現れている現状の世界はとてもリアルで、臨場感が高いはずです。

というよりも、臨場感が高いからこそ現実として現れ、現状となっているのです。

一方でゴールの世界は、どうしても臨場感が低くなってしまいます。 現状が過去の記憶に基づいて臨場感高く作り上げられているのに対し、未来のゴールは記憶を直接的に利用することができないからです。

さらに、ゴールが大きくければ大きいほど臨場感は感じにくくなってしまいます。 だからこそ、ゴールの世界を達成したはずの自分を検討し、文章に記述し、それを唱える技術であるアファメーションを用いることで、ゴールの世界の臨場感を上げていく必要があるのです。

毎日アファメーションを唱えていれば、だんだんとゴールの世界に臨場感がわいてきます。

はじめはピンとこなかったゴールが、だんだんと実感を伴って味わえるようになります。

やがてゴールの世界こそが現実として選択されることになるでしょう。

  《アファメーションの詳しい説明はこちらを参考にしてください→あなたを成功に導くアファメーションの作り方》  

 

ダイナミックなプロセスへ

さて、本記事では『思考は現実化する』を批判的に検討した上で、コーチングが提示するゴール達成の仕組みを概括しました。

最後に、それらがどのような点で異なるのかもう一度まとめてみましょう。

『思考は現実化する』が提示する目標(願望)の設定は、はっきりとしたものであり、そこから演繹的に導き出される完全な計画を立てることでした。

確かに合理的であり、それなりの説得力がありますが、人間はそのような単純な存在ではありません。 一度定まったスタティックなプログラムの上をただまっしぐらに走っていくことが、人間として自然なこととは考えにくいでしょう。

実際には、ゴールを設定し、行動をしながら現状が変わり、新しい情報を得て、知識を獲得し、その都度ゴールを更新・変更し、また現状の見え方が変わる。

そのようなゴールと現状の双方向的なフィードバック関係そのものがダイナミックに循環しながら未来へと進んで行くのが自然な状態でしょう。

だからこそコーチングでは、現状の外側にゴールを設定したり、ゴールの更新を認めたり、現状の中では見えない知識(スコトーマ)を想定したりしているわけです。

ゴールを設定し、アファメーションを用いて臨場感を高めることでゴール側が現実になっていき、その中で得た知識をもとにゴールを更新、変更していきます。 体感としては、行きつ戻りつ、ゴールと現状が入り乱れながら、より総合的な視点として未来側へと進んでいるという感じでしょうか。

そして気がつけば、はじめは想像もしなかった場所に立っているというわけです。

こういったダイナミックなプロセスを許容する点こそが、認知科学のバックボーンにある非単調性に基づいて構築された、コーチングの最大の特徴であると言えるのです。 参考になりましたら幸いです。