コーチングにおいて最も大切なのは、目標の設定、つまりゴールの設定です。
ゴール設定の精度によって、その人がどのような人生を送るかの大部分が決まってしまうと考えます。
これまでの記事の中でも、たびたびゴールについて書いてきたのはそのためです。
ゴール設定の基本は、「コーチング理論で考える正しいゴール設定の方法」を読んでいただきたいと思います。
今回の記事では、ゴール設定のもう一歩先に進んだ考え方を紹介したいと思います。
結論から先に言えば、ゴールは複数設定し、バランス良く達成すべきであるということです。
人生の究極の目標とは何か
人が生きる上での究極の目標とはなんでしょうか。
それは幸福になることでしょう。
私は不幸になりたいので異論があります、という人はたぶんあまりいないでしょう。
コーチングの理論は、まさに幸福になるためにあるといえます。
では、幸福とはいったいなんなのでしょうか。
幸福とは欲求が満たされた状態である
幸福とは人間の状態に名付けられた言葉です。
その状態とは、欲求が満たされた、あるいは、満たされつつある状態ということができます。
アメリカの心理学者でアブラハム・マズローという人がいます。
マズローの研究として有名なものに、「欲求5段階説」があります。
これは人間の欲求を5段階に分け、欲求は低次のものから高次のものへと順次成長していくものだという説です。
マズローによると、低次の欲求が完璧に満たされていなくても、より高次の欲求を志向する段階に移ることはあり得るそうです。
実際の個人の中での欲求は、場面や環境にあわせて逐次上下するような形で変化し、波打ちながら高次へと進化していくのでしょう。
とにかく、幸福とは欲求が満たされること、満たされつつあることであり、その内実はさまざまであるということがわかります。
抽象度とは何か
ここで抽象度という概念について理解していただきたいと思います。 抽象度とは英語で 「levels of abstraction」 といいます。
それは概念の包含関係と捉えることができ、図形的にイメージすると理解しやすいはずです。
まず大きな円を想像してください。
この円を新聞と名付けます。
この円の中にはありとあらゆる具体的な新聞が入っていると考えて下さい。
このとき、この円は「集合」であり、中に入っている新聞はその集合の「要素」であるといいます。 さて、その集合の中に、「朝日新聞」、「日経新聞」、「毎日新聞」、「読売新聞」が入っているとします。
それらは、大きな集合である「新聞」の中に入っている要素ですが、同時にそれぞれが小さな集合になっています。
「新聞」という円が、「朝日新聞」、「日経新聞」、「毎日新聞」、「読売新聞」という小さな円を包んでいる様子が想像できるでしょうか。
この場合に「新聞」は、「朝日新聞」、「日経新聞」、「毎日新聞」、「読売新聞」よりも抽象度が上であると考えます。
このように抽象度とは、低い抽象度を高い抽象度が包み込む形として理解することができます。
幸福を具体化する
ここで、幸福についてもう一度考えてみましょう。
幸福を、大きな円と考えてください。 さきほどの新聞と同じポジションです。
そうすると、幸福の中にはさまざまな具体的要素があるとわかるはずです。
いい服を着たい、家族を海外旅行に連れて行きたい、学問で博士号を取りたいなど、いろいろな要素が考えられます。
それらの要素はすべて欲求であり、達成されるべきゴールです。
コーチング理論では、それらを複数のカテゴリーとして、分類して考えます。
- 「人間関係」に関するゴール
- 「家族」に関するゴール
- 「仕事とキャリア」に関するゴール
- 「心身の若さと健康」に関するゴール
- 「ファイナンス活動」に関するゴール
- 「教育と生涯学習」に関するゴール
- 「趣味」に関するゴール
- 「地域での役割とボランティア」に関するゴール
- 「老後」に関するゴール
- 「信仰」に関するゴール
幸福の具体例として、これらのようなゴールのカテゴリーを考えることできるのです。
複数のゴールの調和がとれてこそ幸福である
ここで立ち止まって考えていただきたいのは、これらのゴールがどのように達成されると幸福なのか、ということです。
おそらく、どれかひとつのゴールだけが文句なく達成されたとしても、その他のゴールが著しく達成されていないようでは、幸福と感じにくいのではないでしょうか。
大変な社会貢献はしているけれど、毎日が食うや食わずの生活だという状態は、あまり幸福とは呼べないはずです。
また、年収1億円は達成したけれど、家族親戚関係はズタボロだ、という状態も同様でしょう。
つまり、数あるゴールがバランス良く満たされてこそ、人は幸福を感じられるということです。
先ほどあげたゴールのカテゴリー群は、総称して「バランスホイール」と名付けられています。
この名称には、ゴールは複数設定し、それらがバランス良く達成されてこそ幸福であるという思想が込められているのです。
ゴールに偏りが出てしまったらどうするか
とはいえ、どうしてもやはり、極端にひとつのゴール達成を目指すような状況に陥りがちです。
とりわけ日本では、仕事とファイナンス活動に重きが置かれがちです。
結果的にどうなるか言えば、その他のゴール達成が阻害されるようになります。
仕事に没頭した結果、家庭をかえりみないということはよく聞く話です。
こういった場合に意識をしてほしいのは、個々のゴールのひとつ上の抽象度です。
つまり、個々のゴールはあくまで「幸福になる」ために存在しているという視点を思い出して欲しいのです。
それは、個々のゴールはどれも等しく重要であり、どれひとつ欠けたとしても幸福は損なわれる事実を確認する行為なのです。
まとめ
この記事は、目標やゴールは複数設定するべきであるという内容でした。
その際にはバランスホイールに従って考えるとよいでしょう。
そして大切なのは、幸福になるというひとつ上の抽象度から、個々の目標やゴールを眺め、バランス良くそれらを達成していくということでした。
参考にしていただけると幸いです。