いま現在やっている仕事の改善点を見つけるために、いまとは別の視点を持ってみましょう。
いまAさんは、仕事を持たれているとします。どんなものでしょうか。たとえば、イタリアンの料理人であると考えてみます。イタリアンの料理はコースによって構成されています。食前酒があり、一口料理があり、前菜があり、パスタがあり、メインディッシュがあり、ドルチェがあり、カフェがあるといった感じです。もっと細かいものまで含めた構成もあるようですが、ひとまずこんなふうに考えてみましょう。そしてその中でAさんはパスタを担当していたとします。
美味しいパスタを作るにはいろいろな工夫が必要です。麺の種類や塩加減、湯で時間、ソースの種類、あとは季節のものをどう取り入れるかなど、考えることがたくさんあります。それらを意識しながらしっかりとした料理のレベルまで持ち上げるには、それなりの習熟が必要でしょう。Aさんは長年修行し、パスタ作りに関してはとりわけ自信を持っています。そしてこれしかない、と思える最高のパスタを作ることができました。さて、この人の仕事のレベルをワンランク高めるためにはどうすればいいでしょうか。
答えは、自分以外の視点をたくさん入れることです。このパスタは確かに最高のできかもしれませんが、それはAさんの視点から見て最高であるという可能性があります。たとえば、このパスタのあとに来るBさんの視点は考えてみたでしょうか。Bさんからすれば、メインディッシュはこってりとした肉料理だから、パスタはもう少し軽いもののほうがいいな、などと感じるかもしれません。視点によって評価がまったく変わってしまいます。
あるいは、経営者のCさんからすればどうでしょうか。たしかにAさんのパスタは絶品なんだけど、材料費が掛かりすぎていてこの値段のコースで提供するには厳しいな、と感じるかもしれません。また、実際にこのコース料理を食べに来るお客さんたち一人一人にの視点もあります。それらすべて、違った重要性を持っているため、Aさんとは違った判断が出てくる可能性があります。
ワンランク上の仕事をするためには、自分の仕事に対して多様な視点をしっかりと考えていくことです。そうでなければ「このパスタは最高の出来だ!」といった思いが、自分以外誰も喜ばせることの出来ない独善的なものに傾いていく可能性があります。ワンランク上どころか、ワンランク下のレベルにいつのまにか落ちてしまいかねません。自分の視点を大事にしながら、それでいて関わる人達の視点もしっかりと観ることです、そして、それらすべてを統合した上で「最もいい形はどんなパスタだろうか」という視点が出来上がったとき、Aさんはきっとワンランク上のイタリアンの料理人になっているはずです。
ところで、この視点の移動を効果的に行うためには、あなたのマインドの中で2〜3別の視点から工夫する必要があります。それについてはまた稿を改めて書くことにしましょう。
それでは。