「期待感」にはやっかいな側面があります。
コーチングの重要な概念として、expectation(期待、期待感)というものがあります。
人間の持つ無限の可能性を阻害しているもは4つあり、その中ひとつがこの expectation の度合いです。
現在の自分に対する expectation が、自分のパフォーマンスの限界を作っているという考え方です。
逆に言えば、この expectation を高めていくことで、私たちはどこまでも自分のパフォーマンスを高めていくことができるとも言えるのです。
なので、私たちコーチは、クライアントが自らにどのくらい expectation を持っているかを観察します。
そして、クライアントが自身の可能性をもっともっと解放できるように expectation をするのです。
一方で、他人に「期待」をする人がいます。
そしてそういう人は、他人が期待通りにふるまってくれなかったら、ショックを受けて落ち込んだり、当の相手を攻撃したりします。
コーチとしての expectation も、クライアントに対する期待をするわけですが、仮に期待通りでなかったとしても、落ち込んだり攻撃したりはしません。
シンプルに、「あなたらしくない」と接するだけです。
何が違うのでしょうか。
他人に期待をする人は、コーチが expectation するように、他人が他人自身のゴールのために高いパフォーマンスを発揮することを期待するわけではありません。
他人が、自分の何かを埋めてくれることを期待します。
それは、
「優しい言葉をかけてほしい」
「仕事をふってほしい」
「思い通りの答えを教えてほしい」
「なんでもいいから全肯定してほしい」
「自分のことを好きになってほしい」
「いつなんどきも相手をしてほしい」
「お金をわたしてほしい」
「自分のことを評価してほしい」
といったものです。
つまり、全部自分のためなのです。
自分の何かを埋めるために、他人に期待をするのです。
これは、自己評価の低さからくるものであるとコーチングでは考えます。
コーチングにおける自己評価の概念は、2つあります。
エフィカシー(self-efficacy)とセルフ・エスティーム(self-steem)です。
いずれも自分で自分のことを評価する指標です。
自分で自分を評価することができていれば、他人にそれを埋めてもらう必要はありません。
だから、他人になんとかしてもらおうという期待を持つ必要がありません。
そういう人は、何事も自分で達成できると信じているし、たとえ達成できなくても自分には価値があると思っています。
他人に期待する人も、本当は、自分で自己評価を上げていく方向へと進むべきなのに、他人に何かを埋めてもらうことを期待します。
それは自分に対する expectation とは真反対の方向でしょう。
期待通りにならなかった場合、その人にとっては実存の危機なわけだから、落ち込んだり攻撃的になったりするのです。
いかに自己評価が重要かということがよくわかるでしょう。
コーチは、クライアントにクライアント自身のための可能性が発揮されるよう expectation を向けます。
仮にクライアントの可能性が思ったように発揮されなかったとしても、落ち込んだり、ましてやクライアントを攻撃したりはしません。
なぜならコーチは、コーチ自身が徹底的に自己評価を高めるトレーニングを積み続けているからです。
たとえクライアントが expectation したほどにならなかったとしても、自分にはこの人を導くことができると確信しているのです。
「トレーニング」という言葉に注意してください。
自己評価は、まさにトレーニングのように、毎日の蓄積と、正しい取り組みによって、どこまで高めていけるのです
決して固定的なものではありません。
つまり、あなたもいくらでも変えていけるということです。
私はそれをあなたに「expectation」 しています。