この記事は、人間関係の悩みはマインド(脳と心)が生み出している、よって、人間関係の悩みの解消のためにマインドを上手に使えるようになろうという主張について書かれた記事です。
人間関係に悩む人は多いようです。たとえば、上司とそりが合わない、彼女とうまくいかない、子供のことを愛することができない、友達と呼べる人ができないなどと言った悩みです。事実、私がコーチとして活動していて寄せられる相談の多くは、こういった人間関係によるものです。
人間関係の悩みというのはつらいものだから、当然どうにかしたいと考えます。私に相談をされる方も、自分で何もしないというわけではありません。当然のことながら、人間関係の悩みに直面した際には、まず自分で何かしようとするでしょう。もしかすると、そこには、人の力を借りるなんてかっこ悪いという思いがあるかもしれません。また、人の力を借りることを想像することすらできない場合もあるでしょう。いずれにせよ、人間関係の悩みを持った人はまず自分でなんとかしようとします。
人間関係の悩みを抱えた時、多くの人は自分以外の何かのあり方をどうにかしようと考えます。人間関係に悩む人の多くには、このような傾向があります。自分以外の何かとは、典型的なもので言えば相手の人間です。たとえば、上司とそりが合わないということであれば、上司が悪い、だから上司が変わるべきであると考えるなどといったことです。また、少し視点を大きくとって、こんな上司を生んだ組織が悪い、などと考えたりもします。そしてそういった「自分以外の何かが悪い」という考えのもと、自分の振る舞いを決定していくのです。
しかし、これでは悩みは解決されません。なぜなら、そこには「自分」のあり方も省みるという視点が欠如しているからです。さきほどのように、自分以外の何かが悪いという視点にこだわっていると、自分のあり方を省みることができなくなってしまいます。たとえば、付き合う相手がいつもろくでもないという人がいます。そういう人は相手のことをけなしますが、いつも選んでいるのは自分です。自分以外の何かに原因を求めていると、このような事態を招きます。
ただし、自分だけが悪いのだという考え方のみにとらわれるのも間違いです。こういう人は往々にして自虐的で、自分で自分の生命力を削ぐような生き方をしています。実際には、「人間関係」という言葉が示しているように、悩んでいるのは「関係」であって、特定の誰かが悪いということではありません。だから、人間関係に悩んだ場合に、「自分だけが悪い」という考え方も間違っているといえます。
以上のことから、人間関係に悩んだ際には、自分以外の何かと、自分との間に現在取り結ばれている関係が良くないのだと考える必要があるとわかります。人間関係の悩みを多く聞いていると、そのほとんどが極端な意見に終止しています。つまり「100%相手が悪い」か「100%自分が悪い」のどちらかであるということです。これはいずれも間違いです。先述したように、人間関係とは関係に対する悩みであり、である以上にそこに参加する自分にも相手にも責任の一端はあるからです。
ところで、この人間関係を観察し、上手にコントロールすることができるのは何なのでしょうか。コーチングでは自分のマインド(脳と心)であると考えます。マインドとは、脳と心の働きのことです。外側から入ってきた情報に対して、何らかの処理が行われ、外側へと反応を生み出すその機能のことを言います。このようなマインドの働きに長けることで、自分以外の何かと自分の関係を観察し、コントロールすることできるようになります。
逆に言えば、人間関係の悩みは自分のマインドが生み出していると考えることもできます。コーチングでは、すべての問題はマインドが生み出しているという立場をとります。問題が人間の営みである以上、マインドを経由しない問題は存在しないからです。人間関係の悩みという範疇でもそれは同様です。自分がマインドを上手に使い、相手と自分との関係という情報を上手にコントロールできていないからこそ、人間関係に悩むのです。
従って、人間関係の悩みを持つ人は、マインドを上手に使えるようになればいいとわかります。マインドを上手に使えるようになる方法はたくさんあります。まずは、コーチングの理論を書籍などで勉強してみるところからはじめるといいでしょう。TPIEといったセルフコーチングのプログラムもあります。そしてなんといっても、プロのコーチと関わるという方法にまさるものはありません。いずれにせよ、マインドが上手に使えることで人間関係の悩みは制御できるようになるはずです。