アパレル、美容室、カフェ、コンビニ……、世の中にはたくさんの商売があります。
そのどれもが例外なく売り上げのことを考えて運営されているはずです。
それもそのはずで、売り上げが立たなければその商売をやめなければならないからです。
そこで経営者たちは、売り上げのアップに頭をひねるわけです。
ところが、経営者が売り上げのアップにつとめればつとめるほどに、かえって状況が悪くなるということがあります。
状況が悪くなるほどではなかったとしても、なかなか大きな結果を出せないということは本当によくあります。
さて、そういった経営者たちは何を間違えているのでしょうか。
この記事では、売り上げをアップさせようとする経営者たちが陥りがちな罠について解説し、どうすれば正しく売り上げをアップさせられるかについて書いてみたいと思います。
既存の売り上げアップの方法
この記事を書くにあたって、売り上げアップの方法としてどのようなものがあるのか調べてみました。
- 活気のある店舗にする
- 商品ではなく、人を売る
- 目玉商品を作る
- 数量限定の商品を作る
- ドアのない店にする
- 選びやすく、手に取りやすい陳列にする
- 店を清潔にする
- 愛想よくするよう従業員を教育する
他にもいろいろとありますが、目に付いたのはこんなところでした。
問題点
さて、これらのアプローチは正しいのでしょうか。
いかにも正当なことばかりのように思えるかもしれません。
しかし、これらのアプローチは、正しいとも間違っているとも言えません。
「クロスセル」という販売手法をご存知でしょうか。
クロスセルとは、「ある商品を販売する際、その商品の関連商品を同時に進める手法のこと」です。
ハンバーガーショップで「ご一緒にポテトもいかがでしょうか」と言われたことがあるでしょう。 これがクロスセルの代表的な例です。
さて、このクロスセルは多くの店舗で行われていますが、正しい手法なのでしょうか。
やはりこれも、正しいとも間違っているとも決められません。
もちろんクロスセルによって一定の効果が上がる場合もあるでしょう。
しかし、そういった販売方法を嫌がる人も一定数いるであろうことは、少し考えればわかるはずです。
上にあげた例についても考えてみましょう。
- 活気はないが、静かで落ち着いた隠れ家的な店舗
- 誰が接客しても関係ないくらいにクオリティの高い商品を揃えている
- これといった目玉はないが、どの商品もはずれがない
- いつ行っても欠品がなく、安心できる
- ドアがしっかりとしており、入店すると別世界に行くような気分になれる
- 陳列が複雑で不親切だが、宝探しをしているような楽しさがある
- 店が清潔とは言えないものの、味わいがあって落ち着く
- 愛想がない店だが、変に気をつかわなくていい
少々強引に見えるかもしれませんが、このようにほとんどの価値観はひっくり返すことができるのです。
これこそが、多くの売り上げアップの方法が正しいとも間違っているとも決められないといった理由です。
もちろん、売り上げアップの方法としてはじめにあげた例は、多くの人を引き込む方法としては正しいのでしょう。
しかし、それを鵜呑みにすることによって、それに当てはまらないお客様がいるかもしれないことを忘れ、思考停止してしまうのが問題なのです。
このような事態を俗に、マニュアル化と呼びます。
マニュアル化は視点を上げることで防ぐ
マニュアル化に陥らないためには、どうすればいいのでしょうか。
それには視点を上げて考えるしかありません。
視点を上げるとは、目の前のことだけではなく、多くのことにあてはまるようなやり方を意識するということです。
たとえば、先ほどのクロスセルの例で考えてみましょう。
クロスセルをマニュアル的に行うと、それを嫌がるお客様にとってはマイナスであるということは確認しました。
視点を上げて考えるとは、クロスセルをやりさえすればいいという単純な考え方をやめ、そのクロスセルはそもそも何のためにやるのか考えるということです。
クロスセルをなんのためにやるのかというと、言うまでもなく、売り上げをアップさせるためです。
だとしたら、クロスセルをやることによってお客間を不快にし、売り上げが下がることにつながると予測される場合はクロスセルをやるべきではないという判断が出てきます。
このように、ひとつ上の視点(売り上げをあげること)から、それぞれの判断(目の前のお客様にクロスセルを行うのかどうか)をできるようになることこそが、より効果的な売り上げアップのアプローチでしょう。
店舗戦略や従業員教育において、この部分が曖昧なまま、具体的な方法論だけが共有されているため、マニュアル的な対応になってしまうという事態がよく見られます。
視点を上げ続けるとゴールになる
さて、さきほど提案した視点を上げることを推し進めていくとどうなるでしょうか。
「クロスセルを行う」という視点から、「売り上げをアップさせる」という視点に移動し、さらに視点を上げると、「すべてのお客様を満足させながら売り上げをアップさせる」、さらに上げると「地域社会に貢献するしながら売り上げをアップさせる」というように、どんどんと規模が大きくなってきます。
「クロスセルを行う」というのは、あくまで自分の中だけの話でした。
それが「売り上げをアップさせる」というのは店舗運営という広さでものを見ています。
「すべてのお客様を満足させながら売り上げをアップさせる」となると、お客様を含む広さになり、「地域社会に貢献するしながら売り上げをアップさせる」となると、直接的なお客様以外にも何かできることはないだろうか、というとても広い視野の話になります。
ここまでくれば、立派なゴールと呼べるものになっています。 コーチングにおけるゴールとは、心から達成したい目標のことをあらわします。
実は、このような視点の移動からうまれた大きなゴールが、正しく売り上げをアップさせていくために大変重要な意味を持ちます。
*ゴールに関する詳しい説明はこちらの記事をご覧ください
「コーチング理論から考える、目標設定のリアリティを上げる方法」
売り上げをアップさせたいのは現状への不満からきている
そもそも売り上げをアップさせたいということは、現状に何かしらの不満があってそう考えているはずです。
現状の商売の規模に不満なのか、もっと収入を増やしたいなのか、従業員に賃金を還元してあげたいなのか、その内容は様々でしょう。
それらはすべて、現状に不満を感じているのだと考えることができます。
それ自体はまったく問題ありません。
しかし問題なのは、多くの経営者はこういう場合、いままでやってきたことをもっと上手にやろうとして対処しようとすることです。
たとえば、クロスセルを実行してみてあまり効果がみられなかったので、今度はアップセル(購入を考えているものよりも上級の商品を提案する販促方法)でいってみよう、ということをするのです。
しかしながらこれでは、大きな効果を生み出すことは期待できません。 むしろ、あまり効果の上がらない現状の内側での方法論にとらわれ、新しい試みを邪魔してしまう可能性があります。
それもこれも、問題となっている現状の内側だけでしか考えていないからです。
現状の内側だけでいくら考えても、現状の不満を打ち破るようなアイデアは絶対に出てこないのです。
大きなゴールは現状の外側に行くことを要求する
それでは、現状の不満を打ち破る、効果的に売り上げアップをしていくためのアイデアを見つけるためにはどうすればいいのでしょうか。
それは、現状の外側にある大きなゴールを持つことです。
たとえば、売り上げを10%アップするという目標を掲げているのならば、売り上げを500%アップするくらいのゴールにしてしまいます。
また、既存の顧客を満足させるという目標を掲げているのならば、地域にいる全員を満足させるというゴールにしてしまいます。
これらはあくまで例ですが、このように大きなゴールを掲げると、嫌でもいままでやってきたことと違ったことを考えなくてはなりません。
そうすると、自然と視野が広がっていくのです。
さきほどのクロスセル、アップセルという例で言えば、お客様の状態にあわせてクロスセルもアップセルも自由自在に使いこなせる接客を身につけるという現状の外側の発想が生まれてくるということです。
現状を大きく超えるゴールを設定し、そのために現状をどう変えていくかを考えること。
それこそが現状を打ち破り、本当に売り上げをあげていくための正しいアプローチなのです。
まとめ
この記事では、安直な売り上げアップの危険性を指摘し、正しく売り上げをアップさせていくことについて書きました。
そのためには現状を超えたゴール設定が重要であるということでした。
参考にしていただけると幸いです。