基礎編では、エフィカシー(self-efficacy)の定義を説明し、エフィカシーを上げていくための考え方を説明しました。
エフィカシーとは「ゴールを達成するための能力の自己評価」、いわゆる自信のことであり、自己の評価なのだから勝手に上げてよいものだということでした。
自信は勝手に持っていいのです。
さて、実際にエフィカシーを上げてもらえたでしょうか。
本来なら、エフィカシーの上げ方はそれで終わりなのですが、エフィカシーを上げたものの、その確信度がゆらぐこともあるでしょう。
「自分にはできるはずだ! でもそうは言ってもなあ……」という具合です。
そこでこの記事では、発展編と称して、確信度がゆらがないように、また、ますます確信度をあげていくための具体的なテクニックを紹介いたします。
このテクニックを日々取り組むことによって、あなたのエフィカシーは必ず上がっていくことを請け合います。
《*この記事から読み始めても理解できるように書いてありますが、より理解を深めるために、ぜひこちらの記事も読んでみてください→「自信を持てない人のための処方箋(基礎編)」》
人はそもそも自信を持って生まれてくる
人はなぜ自信を失ってしまうのでしょうか。
生まれたときはみな自信満々だったはずです。
自信満々に日々を過ごし、たくさんの成果をあげてきたはずです。
もしかしたら、自分はそんなたいしたことはしてません、と言いたくなるかもしれません。
でも、そんなことはないのです。
みな一様に言葉をしゃべり、立ち上がり、体が大きくなりました。 これはすごいことです。
自信に満ち溢れていなければ、絶対にできないことなのです。
極めて複雑で困難なことを、ほぼ全員が身につけて成長していくのです。
なぜ自信を失うのか
ところが、多くの人は、自分はなんだってできるはずだという確信をいつの間にか失ってしまいます。
多くの場合それは、失敗の積み重ねによって起こります。
失敗を重ねることで、ああやっぱり自分はできないのだと感じるようになるのです。
また、自分にとって影響力のある人から、お前は失敗したのだと強く刷り込まれることも多くあります。
失敗は存在しない
本来ならば、絶対的な失敗などありません。
たとえば、大学受験で第一志望に受からなかった人がいたとします。 その人は受験に失敗したと思うでしょう。
しかしその人は、しぶしぶ入った第二志望の大学で出会った教授の教えに感銘を受け、学問に打ち込み、その分野を代表するような学者になったとします。
この場合、大学受験は失敗だったといえるのでしょうか。
もちろん、こんな風にわかりやすく、結果的にはよかったと思えるような例ばかりではないのかもしれません。
しかし、ここで言いたいことは、失敗かどうかは常に流動的で答えなどないという事実です。
だったらわざわざ失敗だったと認定して、自己評価を下げる必要などまったくないことが分かるはずです。
セルフトーク
人間は常に内省的な独り言をしゃべっています。
これをコーチングの言葉でセルフトーク(self-talk)と言います。
セルフトークの恐ろしいところは、それが習慣化されることによって本当にそのような人間になっていくということです。
たとえば、何か失敗をしたときに、「やっぱり自分はダメだなあ」というセルフトークをしてしまったとしましょう。
そのことで、自分の脳内にある「自分はダメである」という考えがひとつ強化されます。
失敗をするたびに同じようなセルフトークを繰り返すと、ますます自分はダメな人間であるという考えが強固なものになっていきます。
気がつくと自分がダメな人間であるということが絶対的な真実であるかのようになってしまいます。
自信のない状態に安心してしまう
そうなると、自分がダメな人間であるという状態がコンフォートゾーン(comfortzone)になってきます。
コンフォートゾーンとは自分が安心できる領域のことでした。
なんと、自分がダメな人間であるというネガティブな状態が、その人にとっては安心できる現状になってしまうわけです。
どのような状態であれ、コンフォートゾーンになった以上、居心地がよく感じられます。
そんなことはない、自信のない自分の状態が居心地いいわけがない、と言う方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、コンフォートゾーンが現状を維持しようとする力はとても強いということを思い出してください。
これは逆に言えば、コンフォートゾーンを脱するにはとてもつもないエネルギーが必要であることを意味します。
よって、自信の持てない自分は嫌だと意識が感じる一方で、ものすごいエネルギーを使って新しい自分になるよりはマシだと無意識は判断してしまうのです。
まさに、分かっちゃいるけどやめれないという状態です。
これはセルフトークの結果であると考えることができます。
セルフトークをマネジメントする
したがって、失った自信を取り戻すために、セルフトークをマネジメントし、エフィカシーの高い状態をコンフォートゾーンにするという観点が必要になってきます。
セルフトークのマネジメントは、三つの段階に分けて考えると理解しやすいと思います。
すなわち、チェック、改善、無意識化です。 順番に説明していきます。
1:チェック
普段自分が行っているセルフトークを注意深く観察するところからはじめましょう。
セルフトークが肯定的でポジティブなものばかりであれば素晴らしいことです。 意識的に増やしていきましょう。
しかし、否定的でネガティブなものが多い方は注意が必要です。 具体的にどのような場面で、どのような反応をしてしまっているのかを把握していきましょう。
たとえば、仕事でミスをしたとき、「ああ、またやってしまった……、やっぱりおれってミスが多いな」などと思っていませんか。
多くのセルフトークは無意識のうちになされているため、自分でも驚くような発見があると思います。
また、セルフトークは内省的な独り言であると書きましたが、声に出してつぶやいたり、だれかとの会話の中で「自分は〜である」といった発言をしていることも多いです。
そのため、セルフトークをチェックする方法として、自分の参加している会話を録音して聞きなおしてみるという方法も有効です。
あるいは、自分のネガティブな口癖を他人に指摘してもらうという方法もよいでしょう。
2:改善
徹底してネガティブなセルフトークを排除していきましょう。
たとえ何か失敗をしたとしても、「ああ、やってしまった」とか「やっぱり自分には能力がないのだ」と考える癖を取り除きます。
かわりに、「次はうまくいくさ」とか、「ベストを尽くしたから何も気にすることはない」と考えましょう。
そうすると、ネガティブな状態をコンフォートゾーンにしてしまうことを回避することができます。
また、さらに、いつどのようなときでも「自分にはゴールを達成する能力があるのだ」というセルフトークを行いましょう。
この数は多ければ多いほどよい影響を生んでくれます。
あるとき、自分の中に力強い確信のようなものが備わっていることに気がつくでしょう。
3:無意識化
このステップは、上記ふたつのステップをこなしていれば自動的に達成できるものです。
ポジティブなセルフトークも、それが何度も繰り返されれば意識に上らなくとも繰り返せるようになっています。
自転車に乗れるようになってしまえば、あとは考えずに無意識に任せていてもうまく進めるのと同様です。
そのためには現在のセルフトークを意識化し、正しいセルフトークに改善していくという手続きが必要なのです。
ぜひみなさんには、無意識でエフィカシーを高め続けられるような境地に達してほしいと思います。
まとめ
エフィカシーに対する確信を維持するために、セルフトークをマネジメントするという考え方を紹介しました。
みなさんも「自分にはできるはずだ」というセルフトークを維持しながら日々を送りましょう。
きっとエフィカシーの高い状態があなたの安心できる領域になることでしょう。
次回は発展編2と称し、エフィカシーの確信度をあげていくもう一つの考え方を紹介します。
「自分に自信が持てない人のための処方箋(発展編2)」
参考にしていただけると幸いです。